「伝える・揺さぶる!文章を書く」

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「伝える・揺さぶる!文章を書く」

山田ズーニー PHP新書

あなたが文章を書くということは、あなたが納得いくまで自由にものを考えてよいということだ。決められた1つの正解がよそに存在するのではない。常識や模範解答のようなものがあるなら、むしろ、打ち壊していくところに、他ならぬあなたが考える意味がある。

-第一節 意見 自分が一番言いたいことを発見する-

この本は小説を書く、というよりも人を動かす(説得する)というところに重点がある内容になっています。自分の意見(考え)を時には発見し、まとめ、論点を決め、表現するそのステップが段階的に理解できる構成です(著者は小論文教育に携わっています)。表現できないことがどこに問題(原因)があるのか、がわかるかもしれません。ただ闇雲に才能や努力が足りないからではなく、方法が間違ってるかもねって指摘してくれる本。

この本は熱意とかモチベーションをガッと挙げてくれるタイプではなく、冷静な語り口で文章表現の方法を語るタイプだと思います。

小説を書くのに使えるのかって言うと、意外と使えます。

おすすめポイント

  • 自分が何を表現したいのかわかる
  • 思考方法→実践と章立っており、段階的に読み進められる

おすすめのタイトル

要約でわかる!根本思想

その晩、息子は、彼女と大ゲンカして帰ってきた。彼女の留学の事が原因らしい。

息子「俺は、べつに彼女をしばる気はないんだ。彼女は自由だし、やりたいことをやればいい。だから彼女が留学するのは、ちっとも反対じゃない。

ただ、ここで問題なのは、彼女の動機だよ。安易な留学ブームにのっかってるだけじゃねえか、だいたい、そんな、あいまいな気持ちで留学したって、逃げてるだけじゃ……」

母親「淋しいんだね、おまえ」

-第6節 根本思想 自分の根っこの思いに忠実か? より-

いつの時代もオカンは無敵です。この例文は端的でお気に入りです。息子の台詞の表面に現れた言葉ではなく、母親は「本音」をズバリ言い当てています。この節でタイトルにある「根本思想」とは、その人(書き手)の心の底にある想いと表現されています。

自分の「想い」に自信がないと、つい歯切れが悪くなり、たくさんの言葉や語彙でカモフラージュししょうとします。逆に言うと、端的に言い表せる短い言葉こそ、自分の「根本思想」であるといえるでしょう。煮詰まった時に自分に問いかけてみては?と提案がありますが、「言いたかったことは何か?短く言うと何なのか?」に立ち返ることによって軸がブレないものが書けるのではないかと思います。短く言うとってところがミソですね。

思考停止ポイントを発見する

思考停止ポイントとは……

  • 揺るぎのないもの
  • カリスマ性のある人の発言、意見
  • 自分の内面の正義
  • 自分が連発する言葉 例えば「かわいい」「素晴らしい」など
  • 自分の発言の中で「絶対」とつけるもの

他にも一般的な「正論」なんかも含まれるんじゃないかと思います。良くも悪くもそれを突きつけられたら反論がでないもの、です。

それ自体の良し悪しではなく、それによりかかってばかりでは自分の意見がなくなる(思考停止する)よってことだと思います。正論の最も恐ろしいところは寄りかかったときの安心感ですね。

ジョジョ(第一部)に登場するジョースター卿の「逆に考えるんだ…、○○しちゃってもいいさ、と」っていうのはアンチ一般論の座右の銘です。

あなたにしか書けない、かけがえのないもの

常に読み手にとって心地よいことを書いていけば、相手に嫌われないが、それでは書く意味を見失い、読む側の興味も失せてしまう。

-エピローグ あなたと私が出会った意味-

私は読み手にとって心地よいこととは、「世間一般から見て正しい」ことも含まれているのではとも思います。そうなると「相手」ってものが個人ではなくなってしまうかもしれません。

相手と自分の間で発生する違和感や反発という形で、相手の潜在力を揺り動かすことができれば、あなたが書くものはかけがえのない意味を持つのである、とあります。

文章でも小説でも、毒にも薬にもならないっていうのは酷評よりもつらいなぁと思います。じゃぁ内容が過激な文章だったらいいのか?ていうんじゃなく視点の問題だと思うけどね。

まとめ

小論文指導に携わる方の文章だけあって段階的に理解できるようになっているのがいいですね。文章を書くためのお題とかは全くありません。即、実生活や仕事に使える文章作成方法ばかりです(文章作成例あり)。それはそれで役に立つんですが、やはり一般論表現してもアウトですから!ってやんわり言い切ってるのが一番のお気に入りポイントです。

その他実戦編では「上司を説得するメール」や「やる気を引き出す依頼メール」というのもあります。具体的な作成例も載っていて理解しやすい。

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

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