「ライトノベルを書きたい人の本」
榎本 秋 成美堂出版
紹介するのは2008年版です。この本は続編が出てます。
レビューを見る限り、新しい方と内容も大きく変ってないことと、2008年版がたまたま手に入ったので2008年度版をまとめておきます。※管理人はあまり熱心なライトノベル読者じゃないです……(はたらく魔王さま! (電撃文庫)はここ最近で一番面白かったですが、アニメで見ました……。)今回はライトノベルですが他にも「ボーイズラブ小説の書き方」もまとめています。
筆者の榎本氏はラノベ書評や解説本を出版し、専門学校で「ライトノベルを書こう」という講座で教壇に立たれているようです(2008年巻末)
【ラノベ(以下ライトノベル)とは…】
キャッチーなキャラクター、ワクワクするストーリー、可愛い(カッコいい)漫画チックなイラストの三つを武器にするこの小群は、メイン・ターゲットである中高生だけでなく、大学生や社会人にも強く支持されている。
-はじめに より-
おすすめポイント
- 簡単な表現で書かれている(とても読みやすい)
- 小説を書く基本は端的にしっかり押さえられている
他、西谷史氏(女神転生シリーズ原作者)のコラムは面白い。創成期のパソコンにむしゃくしゃしてメガテンシリーズを作ったらしいです。
あと1950年代生まれとあって引用する作品群も渋いです。ラノベで坪内逍遥とは……。「当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)」は明治10年代のラノベだそうです。
おすすめのタイトル
興味の幅から物語が生まれる
根本的に、人間は入力(インプット)した以上のことは出力(アウトプット)できない。小説を初めとする「作り話」であっても、結局はそれまでに見聞きした物事を組み合わせ、再構築することによってしか作ることはできないものだ。
-知識は力になる より-
「耳をすませば」の雫の台詞ですね。
「あたし…、あたし、書いてみてわかったんです。書きたいだけじゃだめなんだってこと。もっと勉強しなきゃだめだって。」
コラムの西谷氏は「恋愛せよ!」って書いてますけど、ちょっとハードルが高いですよね……。小説は地の文(説明や描写)の他に台詞も重要です。人との繋がりが希薄だと難しいです。学生時代は時間とお金がなくて、無駄な付き合いがうっとうしいと思うこともありますが後になってみると生きてくることがとても多いです。芸人さんは女遊びを「芸の肥やし」っていいますけど、経験は「作品の肥やし」といえるかもしれません。
もちろん勉強(知識)も文章の説得力の土台になります。
新たな切り口を作る
ラノベに限らず、今まで出ている小説や二次創作では「すでに使っている」ネタである、と開き直ってもいいと思います。例えば恋愛にしても今までどれだけ使い尽くされたネタかわかりません。
タイトルにあるように、既出のモチーフやテーマでも「見方を変える」ことや「組み合わせる」ことでオリジナルの切り口を作ることがポイントです。独自の発想はオリジナリティといっていいと思います。
商品開発等のマーケティングでよく使われる「オズボーンのチェックリスト」はなかなか使えます。
- 他に使い道はないか(Put to other uses-転用)
- 他からアイデアが借りられないか(Adapt-応用)
- 変えてみたらどうか(Modify-変更)
- 大きくしてみたらどうか(Magnifty-拡大)
- 小さくしてみたらどうか(Minify-縮小)
- 他のものでは代用できないか(Substitute-代用)
- 入れ替えてみたらどうか(Rearrange-置換)
- 逆にしてみたらどうか(Reverse-逆転)
- 組み合わせてみたらどうか(Combine-結合)
-コトバンクより-
ライトノベルは書き出しで決まる
ラノベに限らず書き出しは文章で「つかみ」になる場所です。読み手に手にとって読んでもらうためにどんな書き出しにすればよいか紹介されています。
【最初の一行】
- 完結に作品のイメージを表す
→雰囲気を作る、最初の一歩
例:「我輩は猫である。名前はまだない」- 読者の興味をひく→読者がその後どう進むかを想像させる
【書き出しの上級テクニック】
- 回想シーンから始める
- バトル&アクションシーンから始める
- 本編とは違う形式で始める
・スポーツや格闘技などの大会を物語の軸としているなら、その広告や規約
・吟遊詩人の弾き語りや占い師の予言- メタフィクション的な視点で始める
・冒頭に作者が登場して作中のキャラクターと会話する
例:サクラ大戦
まとめ
上記で取り上げたタイトルの他にも、「キャラクターの作り方」「世界観の作り方」「推敲のしかた」などほかの「小説の書き方」本の基礎編で紹介されていることが一通り載っていました。ラノベの年齢層(作者いわく中高生)向けに書かれた本なのか?表現はかなり優しい。挿絵も一杯載ってます。その辺がほかの小説の書き方とは違う点だと思います。入門編といった感じですぐ読めるところがよいと思います。あと作者がラノベの愛読者(ですよね?)ということでとりあえず書いてみようっていう気分にさせてくれます。その辺のスタンスが、編集者が著者の「ボーイズラブ小説の書き方」とはちょっと違います。