キャラクターとストーリー作りの参考書『トラウマ類語辞典』

2018年9月10日 / 同人活動に役立つアイテム, 小説の同人誌を作る, 漫画の同人誌を作る, 講座と参考資料


読者を引き込むためのキャラクターとストーリー作りとは

キャラクターとストーリー作りに必要なものって?

小説や漫画のストーリーを考えるときに、やはり登場人物のキャラクターづくりは重要です。
例えば主人公の性格や物語にかかわる動機が、そのストーリーを魅力的なものにするかどうかの決定打になるのです。
とはいえ他人の性格なんて、なかなか思いつかない…。特に自分の境遇からかけ離れたキャラクターを考えるのはとても難しいですよね。
ネタ探しに常に追われている人も多いのではないでしょうか?
ジョーゼフ・キャンベルは『千の顔をもつ英雄』の中で英雄神話の形式は、「出立」「イニシエーション」「帰還」としています。

物語では必ず「出立」というスタート地点が必要になります。
そんな時、主人公の動機は何なのか?あるいは、主人公の敵がなぜ悪事を働くのかを考えていくことが重要です。
そんな行動の原動力になるのが『トラウマ(trauma)』です。

改めてトラウマとは何でしょうか。

心的外傷(しんてきがいしょう、英語: psychological trauma、トラウマ)とは、外的内的要因による肉体的、また精神的な衝撃を受けた事で、長い間それにとらわれてしまう状態で、また否定的な影響を持っていることを指す。
心的外傷が突如として記憶によみがえり、フラッシュバックするなど特定の症状を呈し持続的に著しい苦痛を伴えば、急性ストレス障害であり、一部は1か月以上の持続によって、心的外傷後ストレス障害(PTSD)ともなりえる。(wikipedia

人は『トラウマ』を経験することによって、自分が最も大事なことは何か、あるいは道徳、人間関係を変化させていかざるを得ません。そのトラウマという内面の傷の変化(あるいは克服まで)そのものが物語になる事もあるでしょう。
また、二次創作でもキャラクターの分析は同人誌づくりでもとても重要です。
原作者が考えたキャラクターの『トラウマ』を理解できれば、より深く作品を理解できるかもしれません。
そんなトラウマがよくわかる辞典を紹介します。

『トラウマ類語辞典』とは

アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ= 著
新田享子=訳
小山健= イラスト

前回紹介した『場面設定類語辞典』のトラウマ版の辞典となります。


『トラウマ類語辞典』ではさまざまな種類のトラウマがカテゴリごとにまとめてあります。
表紙のポップさとはうらはらに中には犯罪に関わる生々しいものもありますので、苦手な方は注意!(注意事項は書籍冒頭『書き手のためのセルフケア』に記載があります)
※この書籍は原書がアメリカで出版されているため、生活習慣や文化はアメリカ特有の描写があります。

  • 犯罪被害のトラウマ(個人情報の盗難、殺人を目撃など)
  • 障害や損傷によるトラウマ(外見の損傷、過剰な美貌など)
  • 失敗や間違いによるトラウマ(過失致死・服役など)
  • 社会の不正や人生の苦難によるトラウマ(いじめなど)
  • 誤った信頼と裏切りのトラウマ(不倫・浮気・虐待など)
  • 幼少期のトラウマ(依存症の親のもとで育つ、親からの拒絶など)
  • 予期せぬ出来事によるトラウマ(愛する人の自殺、遭難など)

それぞれのカテゴリに10~20以上の詳細な内容(上記カッコ内のような)の分析があります。
詳細は次の項目で紹介します。

『トラウマ類語辞典』で調べられること

「出来の良い兄弟姉妹とともに育つ」※クリックで拡大

『トラウマ類語辞典』では次のような項目が、具体例で掲載されています。

  • 具体的な状況
  • この事例で損なわれる欲求
  • キャラクターに生じる思い込み
  • 行動基準の変化
  • この事例が形作るキャラクターの人格(ネガ・ポジ)
  • トラウマを悪化させる引き金となる出来事
  • トラウマに向き合う/克服する場面

具体的な状況

ここでは、トラウマを追う原因になったできごとについて、具体的なシチュエーションや心理が書かれています。
トラウマを経験すると、気持ちに変化がおき、重要だと思っていたことが変化します。自分にとって大切ものが変わってしまい、自分のやりたいこと(欲求※下記)よりも何かの失うことを恐れ(恐怖)を優先してしまいます。
上の例、『出来の良い兄弟姉妹ととも育つ』では下記を具体的状況として挙げています。

  • スポーツに秀でている
  • 芸術に才能がある
  • 有名人
  • 人気者
  • 美男、美女で有名 など

この事例で損なわれる欲求

『出来の良い兄弟姉妹ととも育つ』では「帰属意識・愛、承認・尊重、自己実現」。
この欲求というのは、はマズローの「欲求5段階説」をより具体的にしたものです(下図参照)

上位から自己実現の欲求→承認・尊重の欲求→帰属意識・愛の欲求→生理的欲求(食・水分、住居、睡眠など)となり下位は生命維持のための原始的欲求となります。
原始的欲求だけではなく、これらの欲求が満たされないと心のバランスが崩れ、人生の支障をきたすことになります。

キャラクターに生じる思い込み

「思い込み」とはトラウマから生じる恐怖から逃れるための心の壁です。
他人のための心の壁であると同時に、「(責任がないにも関わらず)自分のせいで事故が起こってしまった」というような自責の念も含まれていることもあります。

不思議な感情かもしれませんが、よく起こりえる感情でもあります。例えば『暴力を受けたが、それは夜に一人で出歩いて用心しなかった自分が悪い』、というようなことです。(下 『暴行を受ける』参照)

※クリックで拡大

キャラクターが抱く不安

この項では具体的な感情、想いの例が挙げられています。トラウマを経験したキャラクターはトラウマが呼び起こされる(再度経験する)恐怖を常に抱いて生きているのです。

行動基準の変化

トラウマを負うことによって、そのキャラクターの行動がどう変化するかをまとめています。
この行動を読者に伝えることで、より共感させることができるでしょう。変化が急激であればあるほど、読者は「(私たちの)見えない場所でよほどのことがあったに違いない」と想像力をかき立てられます。

この事例が形作るキャラクターの人格

それぞれポジティブな人格、ネガティブな人格の二つの方向性から挙げています。
このポジティブな人格、ネガティブな人格の分類は姉妹本、「性格類語辞典」の分類に基づいています。

ネガティブな方向だけでなく、ポジティブな方向へ向くこともあることは注目です。より多様なキャラクターを作るヒントになるかもしれません。

トラウマを悪化させる引き金となる出来事

引き金になる出来事がたびたび起こるたび、読者はトラウマの原因になった出来事を推測し、興味づけられます。

『出来の良い兄弟姉妹ととも育つ』では下記のような例が挙げられています。

  • 素晴らしい結果を出したのに、さらにそれを上回る結果を誰かが出し、自分の成果は誰にも注目されない。
  • 友人がキャラクターの有名な兄弟姉妹に会いたくて今まで自分を利用してきたかを知る など

過去の出来事として作品で見せる効果的な方法の一つに『フラッシュバック』が挙げられます。回想シーンや、あるキャラクターとの会話を使って一挙に(あるいは小出しにして)見せていきます。これは物語にも動きが出る手法です。そして引き金は出来事(エピソード)だけでなく、色、味、音などの感覚を使ってもよいでしょう。

トラウマに向き合う/克服する場面

キャラクターの成長物語の場合、ここが一番の見せ場になります。

もちろんここで挙げられているのはエピソードの一例です。実際の創作物では、トラウマと向き合う『内面の物語』をしっかりと書くことによってキャラクターに共感が得られます。
キャラクターがどのよう心理状態であるかは書籍冒頭『心の傷とは何か』に記載されています。

「心の傷(トラウマ)の治癒プロセスは、キャラクターが自分のものの見方を変え、自分の価値が見えたときに始まる。これまで信じて疑わなかった偽りを反駁し、自分を無力たらしめていた信念を捨て、あるがままの自分-まだ発展途上の自分-を受け入れる(自己肯定に達する)プロセスが始まるのだ」

トラウマと悪役

実はトラウマは主人公だけでなく悪役が抱えていることもあります。
悪役だけどなぜか魅力あるキャラクターを思い浮かべてみてください。彼ら、彼女らは過去にトラウマを引き起こすような事件にあっていませんでしたか?それその衝撃的な事実はストーリーの大きな柱になっていることも少なくないはずです。
この書籍の『悪役の旅路』という項目には、悪役たちの悪たるゆえんをどのように伝えていくかも書かれています。
5ページの項目ですが、ここは大変興味深いコンテンツです。

例えば「ワンパンマン」に出てくるキャラクター「ガロウ」もそんな悪役の一人。

彼は怪人に憧れ、怪人を退治するヒーロー達を「ヒーロー狩り」と称して痛めつけていく。その行動の理由は、ガロウがかつて悪役に肩入れしていたため、主人公派のクラスメートにいじめられていたという過去にありました。突然振りかざす暴力などの行為(悪事)には何か理由があると思うのが人の自然な心の動きです。(もちろん理由がないことが物語になる場合もあります)

また、そのトラウマが読者に納得されるものであるなら、そのキャラクター自身に信憑性や物語に真実味が生まれるに違いありません。

トラウマを描くための注意事項

トラウマにはキャラクターやストーリーにグッと深みが出ることは理解いただたいたかと思います。
いわばトラウマは物語のスパイスのようなもの。使い方(演出)を間違えると作品が台無しになってしまうかも。
この辞典では、やってしまいがちなな間違いとその対策も書かれています。

  1. 情報過多になりすぎる
    (解決1)トラウマ体験はあくまで物語の背景なので、情報を絞り込み核心のみを伝える。
    (解決2)説明ではなく、ほのめかしやヒントで「見せる」などいろいろなテクニックを取り混ぜる
  2. 演出が下手なフラッシュバック
    (解決1)どのタイミングで挿入するか熟考する
    (解決2)フラッシュバックの内容は小出しにする
  3. 誤用されるプロローグ(作品の意図などを暗示する前置きの部分)
    (解決1)前置で回りくどくならないか考える
    (解決2)読者が共感するための情報(=人)を描く
    (解決3)唐突な大きな変化(〇〇年後)などは慎重に

付録:心の傷フローチャート

本書の付録として心の傷を読み解くフローチャートがついています。
公式ページでもダウンロードできますのでぜひご覧ください。

解説や具体的な作品を使った記入例もあり、使いやすいフローチャートです。

トラウマというキャラクター・ストーリー作りのヒントをぎゅっと詰め込んだ『トラウマ類語辞典』。
創作はもちろん分析にも使える便利な本です。作品のヒントに一度見てみてもおもしろいかもしれません。

アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ= 著
新田享子=訳
小山健= イラスト


おすすめ記事

タグ: , , , ,

スポンサーリンク

BOOTHショップ

SNS

twitterID:@dotsuku

amazon link

スポンサーリンク




お問い合わせフォーム

お名前 (必須)

メールアドレス (必須)

題名

メッセージ本文(必須)

TOPへ戻る