「誰も教えてくれない 人を動かす文章術」

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「誰も教えてくれない 人を動かす文章術」

齋藤 孝 講談社現代新書

単なる記録や報告ではない、人を動かす力を持つ言葉。そうした力のある言葉は、書き言葉の修練を通じて獲得されます。もちろん深い人生経験があれば、そこからにじみ出てくる言葉には重みがあります。しかし、私体は深い人生経験を持っているとは限りません。

人の心を動かし、現実を動かす書くちからを身につけようという意思を持つことで、「言葉の力」に目覚めるのです。
-「プロローグ」より-

【おすすめ ★★★★★(満点)

「人を動かす」とか「言葉の力」とかちょっとスピリチュアル系……?と思ってたんですが全然内容は違いました。もっと現実的な文章の書き方が学べます。

具体的な書くための段取りやネタの収集の方法、着目点(の探し方)は、エッセイだけではなく小説を書く上で役立つと思います。書けない(文章を書くきっかけ、とっかかりが見つからない)人のための本ともいえます。前半は「エッセイを書く」後半は「ビジネス文書」を書くことを扱っています。学生、ビジネスワーカー向けの実用書という感じです。(必要なければ稟議書の書き方などビジネス関連は飛ばしても大丈夫です)

ちなみに課題や解説といった演習的なものはありません。ビジネス関連は作例がいくつか掲載されています。

おすすめのポイント

  • 文章を書くためのステップ(段取り)が具体的
  • 個性や想像力の伸ばし方がわかる
  • 独自の視点をつくる方法がわかる

特に独自の視点をつくる方法はとても面白かった。意外と具体的に書かれている本は少ないので、役に立つと思います。(この記事の下部にまとめています)

情熱とか心意気とかではなく、文章を書くための具体的な方法が淡々と書いてあるのがいいですね。タイトルの言ってることと全く違うわけじゃないけど、個人的にはいい意味で裏切られた内容でした。

おすすめのタイトル

「段取り力」とは頭の中を整理すること

【エッセイを書くための段取り】

  1. ネタ出し※思いついたものを書き出す ※会話をメモする
  2. グループ分け※ネタを3つくらいのグループに分ける
  3. ゴールを決める※最後の文章を考える
  4. タイトルを決める※「つかみ」が大切
  5. 通過地点を設定する※1がこれで「えー!」2がこれで「へぇ」結局3になる「ほぅ」の3つを考える
    ↓書く作業へ

-第2章「まずゴールを決める」より-

ちなみに1~2のステップは「ブレーンストーミング」と言って昔からあるアイデア出しの方法に似てます。

数人でやる場合はダメ出し(アイデアの否定禁止)でやってみると思いのほか面白いものができたりします。

また、2の段階で順序を決めることも重要だそうです。(書き出した時にでスムーズに作業が進む)

ゴールやタイトルを決めるのは意外に早い段階なのですが、後で文章が破たんしないためのコツでもあります。作品のアウトラインが決まっていると精神的にも余裕ができます。
経験から言えることは、タイトルを最後にするとかなり苦しみます…。
本文中に書かれているタイトルを付けるポイント、それは

  1. 疑問形にする
  2. 一見関係のない二つのものを持ってくる

の2点です。ただし、2の場合タイトルからゴールまでの着地点がないと説得力に欠けます。初見の「タイトル」でハッとさせ、最後まで読み終えた後に「タイトル」でナルホドというのが理想形……ですが、なかなか難しいです。

例えば…

  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
  • 世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
  • 容疑者Xの献身

など。本屋さんをぐるぐる回って探してみるのもいいと思います。

「独自の視点の見つけ方」より

「認識の面白さ」とは、個人個人の独自のものの見方です。ここで「私は独自のものの見方なんて持っていないよ」と弱気になる必要はありません。
独自の視点の見つけ方は二通りあります。「異質であると思われる二つのものの間にある共通点を見つけること」と、「同質であると思われている複数のものの間に差異を見つけること」です。
-第2章「まずゴールを決める」独自の視点の見つけ方 より-

独自の視点というのはオリジナリティです。多少異端と思われてもいいじゃないと思います。とりわけ自分が好きで書いている文章ですから。個人的には二次創作こそ異端たれ、と思ってます。

実は共通点があるんじゃないか、というのはとても面白い視点だと思います。それは表面をただなぞっているだけでは得られない視点です。同質であれ異質であれ「発見」のある文章は読んでいる人を惹きつけます。納得のいくオチ(結末)がそろってればなおさらです。

とはいえ、なかなか難しいと思います。別の項に解決のヒントが載っていました。

「肩入れしたい登場人物」を挙げる

そこでまずおすすめしたい手順は、本の中の登場人物の中から「肩入れしたいな」と思う人物を挙げてみることです。(略)

狡さや卑怯さ、軽薄さという人間のマイナス要因を、その代理人になったつもりで、論理的に弁護してみるのです。その論理はすなわちあなた独自の視点となります。
-第4章「学生のための文章術」「肩入れしたい登場人物」を挙げる より-

これは「読書感想文の書き方」ですが、二次創作で最も得意とするところじゃないでしょうか。作中ではこんな風に描かれていたが、意外な真意があった!とかは私も好きです。

またマイナス要因こそ愛しいとする着眼点もすでにオリジナルの視点と言っていいのではないでしょうか。

まとめ

この本はやたらめったらモチベーションを上げて文章書きましょうっていうテンションじゃないのが良かったです。本当に冷静なハウトゥー本でした。良書です。

しかしながら「歪み」とか「無理」こそ個性!と言ってるところもあり、なかなか面白いです。個性出せとか言われてもわかんねーよっっていう人にはぜひおすすめしたい。別に今までの自分を否定しないでも個性はあるんだなぁっていう発見があります。

「書くことが思いつかない人のための文章教室」とセットで必ず読んでほしい本です。


誰も教えてくれない人を動かす文章術 (講談社現代新書)

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